会津ファン特集
1500年の時を超えて、仏都会津・祈りの道会津まほろば街道を往く

人や物資が往来し、交通の基盤となることで地域の歴史や文化を育んできた街道。会津には領主・藩主が整備した5本の道があり、「会津五街道」と呼ばれています。縄文、弥生と古くから多様な地域との交易があった会津には、もう一つ修験者が歩いたいにしえの道があります。南は日光へ向かう下野街道、北は山形県高畠地区まで続く古道。里人が、守り続けてきた文化、暮らしの魅力を語り継ごうと、近年、関係自治体とともに関連団体の皆さんが「会津まほろば街道」と名付け整備されました。
古墳時代からの遺跡や由緒ある神社仏閣、貴重な文化遺産などが連なる街道を歩いてみましょう。

会津まほろば街道沿いにあるロードサイン

会津美里町 法用寺

会津盆地の南西にある古刹 奈良時代後期の建立「法用寺」

“会津まほろば街道”は、会津盆地を見下ろす西側の山裾を進む古道の呼び名です。往時は、出羽三山(山形県)へと通じる修験者の道だったとか。街道としての魅力は、やはり風光明媚な里山に、奈良・京都・鎌倉・平泉とともに仏教文化が繁栄した「仏都会津」の神社仏閣や文化財が点在していることでしょう。里人たちが1500年の時を超えて、歴史や文化を守り伝えてきた地に広がる田園風景、日没時に響きわたる梵鐘が、街道を行きかう人々の心を癒します。
法用寺は、会津で二番目に古い寺院です。奈良時代後期に得道(徳道)上人によって建立されるも平安時代に焼失。大同3年、徳一大師がこの地に再興したと伝えられています。年月を経た木組みの重厚さに圧倒される観音堂は、江戸中期に建てられたものだそうです。垂木や梁、木鼻なども見応えがあります。
お堂には、ご本尊の十一面観音(「火中仏」)、国の重要文化財「法用寺本堂厨子及び仏壇」「金剛力士立像」、県の重要文化財「木造十一面観音立像」などが安置されています。
特に、後期藤原時代の作といわれる金剛力士像は、高さ2m超えるケヤキの一本造り。「仁王像をあまり作られなくなった時代のもので、全国的にも数が少なく珍しいものです。自然木をそのままの形を利用していて、顔が穏やかなのが特徴です」と副住職。以前は、仁王門に祀られてましたが現在は、類焼を逃れるためお堂内に安置されています。

法用寺観音堂(雀林観音堂)。会津33観音第29番札所。春は、会津五桜の一つ「虎の尾桜」が訪れる人を楽しませます。大イチョウが色づく10月には、「法用寺奉納菊花展 観音堂同時御開帳」が開催されます。
金剛力士像。口が開いている阿形も、閉じている吽形も威圧感を抑えながら深い胸中を表現。

奈良時代、平安時代と今をつなぐ祈りの道

境内には、良縁のご利益があるといわれる意加美神社、江戸時代の建築で初重から三重まで屋根の大きさの差が少ない美しい三重塔も。副住職によれば、三重塔のご本尊は釈迦三尊(お釈迦様と文殊菩薩、普賢菩薩)で、法要時のみ初層の扉を開けるそうです。

法用寺

  • 福島県河沼郡会津美里町雀林三番山下3554番地 
  • 【TEL】0242-54-6090(福泉寺)
  • 【駐車場】あり
  • ※観音堂内の文化財の拝観は、御志納金、事前予約が必要です。

会津坂下町 上宇内薬師堂

1100年の歴史を令和に伝える「薬師如来」

 会津五薬師の一つ「上宇内薬師堂」は、江戸時代に再建され、以後地域の人々によって維持管理されてきました。奥の収蔵庫に安置されているご本尊、薬師如来坐像は、183㎝もあるケヤキの一本造りで国の重要文化財です。10世紀頃の作といわれ、胸板の厚い豊かな身体と穏やかなお顔が特徴。
 こちらのの薬師如来には、複数の物語が伝えられています。その一つが会津地方に伝わる“高寺伝説”です。今から1000年以上も前のこと。唐の梁国の僧が、阿賀野川を上り会津にやってきて、高寺山頂に庵を結び仏教のありがたさを説いて回ったのだとか。とても繫栄したそうですがやがて衰退し、高寺にあった仏像などが里の寺院に移されました。いわゆる“高寺おろし”です。
 高寺三十六坊の一つだった調合坊※は調合寺となり、境内に建てられた薬師堂にこちらの薬師如来が安置されたのだそうです。
 その後、二度の洪水と1611年の会津大地震に遭い、薬師堂は荒れ果ててしまいます。元禄4年、道安が30年近く托鉢をし、浄財を蓄え現在の場所に再建しました。諸仏を修復した際、薬師如来の衣は赤に色付けされました。いつの頃か金箔ははがれ、衣の赤も失せ、黒い漆の像になったとのこと。上宇内薬師堂管理者の齋藤満さんも子ども時代は、「黒薬師」と呼んでいたそうです。
 「薬師様は、浄土世界からはるかに遠く離れた瑠璃光世界の主で、生きとし生ける人間のための仏様です。1100年もの間、私たちの願いを聞き続けてこられたのですから、本当にありがたい薬師様なんです」と齋藤さん。上宇内薬師堂は、毎年9月12日の縁日に限り予約不要・拝観無料になります。それ以外の日の拝観は、事前予約が必要です。

悪病を退散させる上宇内薬師堂のご本尊。会津五薬師のうち西に位置することから「西方薬師」とも呼ばれている。
薬師如来と信者の守護を誓った「十二神将」。上宇内薬師堂には十二神将のうち波夷羅(はいら)大将・頞你羅(あにら)大将・安底羅(あんてら)大将・伐折羅(ばさら)大将・珊底羅(さんてら)大将の神将像五躯も安置されている。

上宇内薬師堂

  • 福島県河沼郡会津坂下町大字大上字村北甲809
  • 【TEL】0242-83-1953(管理者 斎藤満)
  • 【拝観時間】9:00~16:00(1週間前まで要予約)
  • 【拝観料】1人500円
  • 【駐車場】あり